【ストア哲学とは?】感情をコントロールするストア哲学の思想。




現代は昔と比べて土地に恵まれモノに溢れ、テクノロジーの発展に伴って人とのコミュニケーションがとても容易になっている。今では部屋から一歩も出ることなく生活することも不可能ではない。

しかし、そうした利便性が高まった生活を手にした一方で、過酷なブラック労働や神経をすり減らす人間関係、年齢を重ねるにつれて感じる現状への不満と将来への不安に悩まされる人も多い。

 

現代社会の中で身体的にも精神的にも追い詰められてしまった人の中には、いっそのこと死んでしまいたいと思っている人も少なくないだろう。おどろくことに、昔よりはるかに豊かになった現代において、生きづらさを感じている人が大勢存在しているのだ。

だが、その生きづらさの正体は現代社会のせいなどではなく、結局のところ、自分の感情をコントロールできないことが原因となっていることがほとんどだ。もちろん、人によっては状況や環境のせいで生きづらくなっているケースもあるかもしれないが、およそ大半の人間が抱える悩みは、自分の感情の暴走が原因となっていることが多い。

 

ここでは感情をコントロールすることに長けた古代の哲学、「ストア哲学」について解説していく。

ストア哲学は現代で活きづらさを感じている人や、感情をうまくコントロールできない人にとって有益となる思想である。興味がある人はぜひ目を通してみてほしい。



ストア哲学とは?

ストア哲学とは、キティオンのゼノンによって紀元前3世紀から発展してきた哲学のことである。今ではヘレニズム時代を代表する哲学として知られており、古代ギリシャ時代において「ストア派」「アカデメイア派」「エピクロス派」「ペリパトス派」は四大学派と呼ばれていた。

ストア哲学は人によってさまざまな解釈がなされているが、私個人の解釈としては、「自らの運命を受け入れ、感情を手懐ける方法を知り、不動心を身につけ、心穏やかにより良く生きること」だと解釈している。

 

つまり、「人間が自由で幸福に生きるためにはどうすればいいか?」ということを、とことん追求していくのがストア哲学の目的である。

ストア哲学と似ている思想には「エピクロス派」があり、ストア派が運命を受け入れて不動心を手にし、欲を失くすことを目的とした「禁欲主義」として考えるのであれば、エピクロス派は愛情や友情、その他人間に含まれる自然的で必要な欲求を追求する「快楽主義」という生き方により「心の平穏(アタラクシア)」目指すのを目的としている。

ストア派とエピクロス派にも共通するのは、どちらの学派も自由と幸福について追求し、人間として幸せに生きることを目指している点だといえるだろう。

 

自然に従って生きる

ストア哲学の重要な思想の一つに、「自然に従って生きる」というものがある。

人生は、生きていれば自分では決してどうすることもできない出来事がたくさん起こる。その一つひとつの出来事に過剰反応し、恨んだり憎んだり怒ったり悲しんだりしていれば、どんなにメンタルが強くても生きることに疲れ果ててしまうだろう。

人生は感情に振り回されれば振り回されるほど、つらく苦しいものになっていくのだ。ストア哲学では、そうした出来事に振り回されないために、自らの運命を受け入れ、感情を手懐ける必要があると考えている。そうした生き方を「自然に従って生きる」と称したのだ。

 

ストア哲学の代表的な実践者であり、古代ローマ帝国の哲学者であるセネカは、毎日すべてを失う覚悟をして生きていたという。モノが壊れようが財産を失おうが家がなくなろうが、そして家族が死んでしまったとしてもすべてを受け入れたという。たとえそれが自分のであってもだ。実際、セネカは皇帝ネロに自害を命じられ、取り乱すことなく命を絶ったといわれている。

ストア哲学の思想は自分の運命を受け入れ、自然に従って生きることで、感情を手懐けることを目指している。だが、それは決して物事を諦めろといっているわけではなく、諦めることと受け入れることはまったくの別物である。

 

自分の運命を受け入れる

さきほども述べたが、ストア哲学では自分の運命を受け入れることを重視している。

というのも、人は自分にとって嫌な出来事や悲しい出来事が起きると、本能的にその出来事を恨んだり憎んだりしてしまうからだ。だが、何かの出来事が起きた時に、その出来事から教訓を学び、自分の運命だと受け入れる考えを持つことはとても大事である。

 

ストア派の人たちは自然に従って生きているため、自分を取り巻く状況や環境、起きる出来事や運命というものを受け入れている。そこにはマイナスの出来事というものが存在しない。

すべての出来事が自分の糧と教訓となり、出来事から何かを学ぶことで人間的な成長につながっていくのだ。つまり、すべてを受け入れる覚悟があるということは、なにも失うものがないということでもある。

 

そして、失うものがない人にとってはすべての出来事がプラスになり、日々の出来事の一つひとつが成長になるのだ。ストア哲学に関心を持ち、ベストセラーにもなっている「ブラック・スワン」の著者であるナシーム・ニコラス・タレブは、このことを「反脆さ」と定義しているが、まさに言いえて妙といえるだろう。

 

感情のコントロール

何度も言うが、ストア哲学では「自然に従って生きること」と「自分の運命を受け入れること」を何よりも重視している。そして、その延長線上に「感情のコントロール」がある。

たとえ明日仕事をクビになろうが、家が火事になろうが、散歩中に車が突っ込んでこようが、ガンが見つかり闘病生活になろうが、感情を取り取り乱すことなく、すべてを受け入れる覚悟を持って生きる。これがストア哲学の「不動心(アパテイア)」というものだ。

 

しかし、それは決して命を雑に扱っているわけではない。ストア派の人であっても、家に強盗が入ってきてナイフを突きつけられればさすがに抵抗するだろうし、致命傷になるような出来事であるなら予め避けておくのが懸命な判断だといえるだろう。

ストア哲学で大事なのは、何事にも過剰に執着せず依存しないようにすることだ。人は依存と執着があると弱くなってしまう。「何かを守りたい」「失いたくない」という感情は強いもののように見えるが、実際には自分自身を弱くしてしまっているのだ。

 

感情のコントロールは依存や執着という鎖から自分を解き放ち、現代の陳腐な意味合いの「自由」ではなく、本当の意味での自由をもたらしてくれる。

ストア哲学は二千年以上も前に存在していた哲学だが、ストア派の哲人たちが残した知恵は現代社会に生きる私たちにとってとても有益であり、現代社会で悩みを抱えるすべての人に役立つものとなるだろう。



ストア哲学を学ぶのにおすすめの本

ここまではストア哲学の思想について、個人的な解釈を交えながら解説してきた。

実際、ストア哲学の思想は人によって解釈が異なっていることが多く、私とはまったく違う解釈をしている人もいるだろう。しかし、解釈は何が正解で間違いかといったものではなく、人それぞれの解釈があっていいものだと思っている。特に哲学に関しては、自分なりの解釈を持つことが大事だと感じている。

 

今ではストア哲学に関する本がいくつか出版されているが、大切なのは本を読んで終わりではなく、ストア哲学に関する知識を仕入れ、自分なりに実生活に生かすことである。

ここからは、実際に私がストア哲学を理解するのに特に参考となったおすすめの本をいくつか紹介していく。ストア哲学についてもっと深く知りたいという人は、ぜひ読んでみてほしい。

 

迷いを断つためのストア哲学/マッシモ・ピリウーチ

迷いを断つためのストア哲学

迷いを断つためのストア哲学

ストア哲学についての本をはじめて読むのであれば、マッシモ・ピリウーチの「迷いを断つためのストア哲学」が断然おすすめだ。この本にはストア哲学の思想の隅から隅まで解説されており、実生活の中でどのようにストア哲学を生かせばいいのかについても述べている。

前半はストア哲学の基本的な思想を解説し、後半では普段どのようなことを意識すればいいのかといった実践的な知識を身につけることができる。ストア哲学に関心がある人すべてに自信を持っておすすめできる本だ。

 

ヘレニズム哲学-ストア派、エピクロス派、懐疑派/A.A.ロング

ヘレニズム哲学―ストア派、エピクロス派、懐疑派

ヘレニズム哲学―ストア派、エピクロス派、懐疑派

ストア哲学についてさらに深く踏み込んでいきたいのであれば、ヘレニズム期のほかの哲学や宗派についても理解しておくのがいいだろう。その際におすすめとなるのがロングの「ヘレニズム哲学」である。

こちらの本はヘレニズム期の重要とされる学派の哲学について詳しく網羅されており、ストア派について解説している部分が特に多くなっている。ほかの学派と対比しながら考えられる点も、自分なりのストア哲学の解釈をする助力となるだろう。

 

生の短さについて/セネカ

生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

古代ローマにおいて、ストア派の実践者として有名なのがセネカである。ここでも述べてきたとおり、セネカは死ぬまでストア派として生きた唯一の実践者だといってもいい。ストア哲学について学ぶときは、セネカの思想についても学ぶのは必須だといえるだろう。

 

自省録/マルクス・アウレリウス

自省録 (岩波文庫)

自省録 (岩波文庫)

マルクス・アウレリウスの自省録は、おそらくストア哲学に関する本でもっとも有名な本の一つだろう。自省録には、第16代ローマ皇帝であったアウレリウスが、自分に言い聞かせる日記のような形でストア哲学を日々実践していた記録を読むことができる。こちらもセネカ同様、ストア哲学について理解するのに必須の本となっている。

 

ストア派哲学入門/ライアン・ホリデイ

ストア派哲学入門 ──成功者が魅了される思考術

ストア派哲学入門 ──成功者が魅了される思考術

時間にあまり余裕がない人は「ストア派哲学入門」を毎日1ページずつ読むことで、手軽にストア派の思想をインプットできる。セネカをはじめ、マルクス・アウレリウスやエピクテトスといった、ストア派の偉人たちの言葉が網羅されているので、こちらの本もぜひ活用してみていただきたい。

 

【まとめ】ストア哲学は現代を生き抜くための哲学

ここではストア哲学の思想や学ぶためにおすすめの本について解説してきた。実際、「哲学」と聞くと多くの人は反射的に難しいものだとイメージしてしまうが、ストア哲学は比較的理解しやすく、それでいて実生活に役立つ実践的な哲学となっている。

はじめにも述べたように、現代は昔より豊かになったことで思わぬ副作用を引き起こしてしまった。仕事や人間関係の悩み、恋愛や人生そのものについての悩みなど、現代人は生活の安定を手に入れることで、生きることや人生についての悩みを多く抱えているのだ。

 

ストア哲学はそうした現代人に対し「今を生きること」の大切さを説き、どうすれば自分を見失うことなく、より良く生きることができるかを教えてくれる。ストア哲学がほかの哲学よりも優れているのは、実践的な側面に沿った哲学だからなのだ。

今現在、人生や生きることについて悩みを抱えている人、少しでもより良く生きたいと思っている人は、ぜひ一度ストア哲学について学んでみてほしい。

おしまい。








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